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2013年11月30日土曜日

日中関係の改善へ努力すべきー尖閣問題(V)ー

 中国の防空識別圏設定により、対中国関係が緊迫しつつある。現在、米国を始め多くの国により中国の強圧的な姿勢に批判が出ている。そして、その国際世論に気を良くして、政府首脳はかなり強気である。安倍総理、岸田外務大臣、小野寺防衛大臣などは、「一方的な防空識別圏の設定には応じられない、領土と国益を断固として護る」とお決まりの発言をしている。しかし、昨日の投稿文に指摘したように、この日中緊張状態の出発点にある野田政権の時の尖閣諸島国有化に関連して、野中広務元自民党幹事長が中国で次のような趣旨の発言をした。「田中角栄総理は周恩来首相(元を省略)と会談した際、尖閣諸島の領有権を明確に日本の領有としたかった。しかし、そのような合意がどうしても得られなかったので、棚上げと言う形で日中共同宣言を何とか出す事が出来た」と田中元総理から直接聞いたということである。また、日中の間に未解決の問題を残す事が、将来日中が接近することを防止するために米国が仕組んだことであるという説もある。野中氏は優れた政治家であると以前より思ってきた。その彼が、今回の日中間の緊迫した情勢を日本の危機として捉え、その危機を乗り越える為の鍵として、田中角栄と周恩来とが裏で確認した「尖閣諸島領有権棚上げ」を使う時であると言っているのだろう。
 現在、中国は世界最大の人口を擁し、経済規模は世界第二位であり、世界一の米国債保有国である。また、かなり付き合い難い国であるものの、アジアで唯一国連の常任理事国、且つ、核兵器を持つ軍事大国である。その存在感は、残念ながら日本より遥かに大きい。そして、尖閣で日本の自衛隊と軍事衝突したとした場合、日本は局所的な勝利を得るかもしれないが、それは日本国の破滅の第一章であるに過ぎないのではないだろうか。国際的には疑問の余地があると看做されている(注1)、「尖閣諸島が日本固有の領土である」という主張に、国の命運を託すことは愚かな選択だと思う。今回は棚上げの為の国有地化であったという線で話を収めるべきではないだろうか。(注2)
 歴史を振り返った時に、軌道を換える事がその後不可能になる分岐点がある。それが今の様な気がする。(注3)切掛は石原前都知事の尖閣諸島の東京都による買い上げであり、石原氏のその後の計画が日中の争いの火種になると考えた野田前総理の国有化宣言である。これらは恐らく、中国当局による企みの始まりだった可能性がある。東京都の所有のままであれば、中国の反応を見て国が出る幕もある。しかし、国が前面にでてしまったため、尖閣諸島を挟んで直接中国と対峙することになった。中国に騙されて国有化したのかもしれないが、何れにしても、野田氏の非常に愚かな決定であった。(前ブログに記した通りである。)今となっては、出来るだけ損害の少ない形で、中国に矛を収めるチャンスを多少の犠牲を伴っても作るべきである。それが、直前の敗戦国、軍事力を奪い取られた国、非常任理事国、そして、非核保有国の採るべき態度である。他国は最終的に自己の利益で動く。第二次大戦のおり、全くあてにならない日ソ中立条約に(和平へ向けた)一縷の望みを託した愚かなことを繰り返してはならないと思う。もちろん日米の絆は日ソ中立条約とは比較にならないが、米国の経済は既に苦境にあり、世界の警察としての役割は果たせないかもしれない。中国が格好を気にする間は、国際世論もそれなりにあてになるが、中国も経済的に苦境に向かいつつある今、格好を気にしなくなると、日本は独自で裸で重武装の中国と向かい合うことになる。そんな覚悟があるのかと、日本政府に聞きたい。

注釈:
1) 国連の常任理事国の一つが「疑問点が残る」と言えば、その疑問点は国連では解消されない。国連以上の国際的権威が無い以上、「国際的に疑問の余地がある」と言える。田中宇氏のブログでは、英国のBBCは今回の中国が新たに設定した防空識別圏の問題を報道したが、淡々と事実のみを報じたという。完全な第三国は論理ではなく、利益で動く。
2) 日本が尖閣諸島を失うことは沖縄全体を失うことであるという、韓国の学者の論文 が出されているとのことである。その根拠は、沖縄はサンフランシスコ講和条約で米国の信託統治領となったので、国連加盟国である日本に沖縄を返還する条約は国際法違反であるというもの。しかし、米国は沖縄を戦時占領の継続の形で統治し、国連に信託統治の手続きをしていないので、その論文の説はあやまりだというブログもある。 この辺りの議論まとめた文章があれば知らせて欲しい=募集=。 3)中国による尖閣上空に対する防空識別圏設定の時点で、その分岐点は過ぎているかもしれない。 ==以上は元理系研究者の文章です。専門家の方の批判等歓迎致します==2013/11/30 am 9:30

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