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2014年3月16日日曜日

STAP論文不正疑惑を、研究行政や制度の問題として捉えるべきではない

  STAP細胞論文の不祥事を、研究者の育成やら教育問題まで広げて議論する動きがある。しかし、今回の件は、特別の個性を持った者による全く特殊なケースであり、制度の問題とは本質的に一線を画すべきものである。確かに、研究者の任期性や評価制度(短期の論文数を加算して評価する制度)の長所と短所は、導入時に議論されたし、それらはファイルされている筈である。従って、それら制度上の問題は、個々の研究機関が今回のケースと関係なく、制度改善の一環として常時考えている筈である。理事長や理事というポストはそのような為にあるのでは無かったのか? ましてや、今回のケースを教育や研究に関する行政の問題にまで広げて議論する必要は全くないと思う。

 今回の不正行為の発生からは、ほとんど何も学ぶべきものはない。(注1)それは、ある特定の研究者の好ましくない個性が原因であり、昔からあったケースである。 朝日新聞デジタル3月16日13時3分発信の記事(注2)によれば、日本学術会議会長や、東京電力福島第一原発の国会事故調査委員会委員長を務めた黒川清・政策研究大学院大学教授が「日本の研究者は、次の世代の研究者をトレーニングすることの重要性をどこまで自覚しているのか心配になる。欧米では、どんな大学院生を育てあげたかで、教員の評価が決まる。小保方さんをスケープゴートに仕立てて終わってはいけない」と語ったということである。この発言の主は、スケープゴートと言う言葉の意味さえご存知ない。大学院教育の中での基礎教育の充実は必要だと思うが、研究のレベルでは教員は研究者としての力を示すのみで良い。もし、大学教員が平均として研究能力が低すぎるという批判なら傾聴に値すると思う。つまり、研究者としての能力は、芸と同じで個性の延長上にあり、磨くのは自分自身である。そして、優秀なる先輩から盗むものであり、手取り足取り教えてもらうものではない。手取り足取り教えた芸は本物の芸にはならないと思う。(注3)

 問題は、不正行為で作成された論文が研究雑誌に印刷されるまで見抜かれることが無かったことである。それは、共著者のあり方や審査のあり方などとして、世界の科学文化に与えられた課題となってのこった。日本固有な問題としては、共著者のあり方のみだと思う。(注4)つまり、科学論文へ共著者として名を連ねることは、ルーティンワーク的な協力(注5)だけでは不十分であり、その研究において共同責任を取れるレベルの協力でないといけないのである。もしそのようなレベルの共著者が3−4人いれば、写真が入れ替わっているなどのミスが生じる筈が無い。
 確かに、ネット社会になり、検索やコピーが容易になるので、コピーペーストで序文を書く場合はあるだろう。しかし、他の論文からとった文章は、準備している論文の中身にもっとも相応しいとは考えられないから、共著者が2−3人いれば原稿を準備する段階で修正される筈である。従って、あまりネット社会になったことを問題の原因として考えるのもおかしい。

注釈:
1) 発生には学ぶべきものは無いが、それを発火点にして大火事になったことからは学ぶべきものはいろいろある。それが以下の議論である。
2) (http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140316-00000014-asahi-sci)
3) 一寸極端な言い方かもしれないが、本質を言ったつもりである。研究者はプロフェッショナルな仕事であり、大学教育以降自分で学ぶ姿勢が無ければなれない仕事である。優秀なる弟子は優秀なる共同研究者になるのだから、先輩や先生にとって有り難い存在である。従って、優秀に育つ弟子なら優秀な先生は育てることに熱心になる筈である。”育つ”と”育てる”は、片方だけの問題ではない。
4)これについては既に前回の記事で述べた。
5) 科学研究を助けるものとして、テクニシャンを研究所におくことが、国により行なわれている。テクニシャンは手続きの決まった化学合成や機械工作を行なう技術者であり、共著者には通常入れない。研究者とテクニシャンの関係は、医師と看護師の関係に似たものである。もちろんテクニシャン制度を導入しなくても、研究者が、テクニシャン的に研究協力した場合は共著者に入れないということを、日本の科学文化として広げることも有力な方法である。
(3/16/22:00; 3/17/7:00第二文節を編集)

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