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2014年10月18日土曜日

日本での企業研究者の待遇:ノーベル賞学者の苦言

 NHKニュースウエブによると、http://www3.nhk.or.jp/news/html/20141018/t10015499691000.html:ノーベル賞決定後初めて帰国(注1)した中村修二氏がNHKのインタビューで、独創的な成果を出す人材が育ちにくい現在の日本の研究環境に苦言を呈した。また、基礎研究については、民間では時間がかかることに関われないので、国が支援体制をもっと充実すべきであると発言した。

   企業の研究者の待遇に関して、プロスポーツ選手と同様に成果に見合った報酬を出すべきだという発言は面白いと思う。研究者の待遇に成果報酬を入れるのは簡単で、特許出願人を会社とその発明に関係した研究者にするか、研究者の給与に特許料金の何パーセントかを加算すれば良い。各企業が、優秀な研究者を獲得する手段として今後考えるべきことであると思う。

 ただ、米国の様に、流動性の高い労働市場であれば実績を給与に大きく反映できる。しかし、研究者としての能力は10年程度の長期雇用の結果を待って決められるのである。無能かもしれない人を定年まで雇用するリスクを持つ日本企業では、改良の余地はあるものの、中村氏の考えておられるような所までの実績に対する報酬配分は困難である。これは、日本の文化の問題であり、変化するとしても、ゆっくりだろう。

 中村氏は、プロスポーツ選手は成果に報酬を受けていると語っておられるが、それは間違いである。プロスポーツの給与は成果報酬型ではなく、投資型である。つまり、今年度の成績に対して、来年度の給与が支払われるのではない。来年度の給与は来年度の予想された活躍に対して支払われるのである。今年度の活躍は、来年度の活躍予想に使われるのである。

   また、プロスポーツ選手は成績によっては次期解雇の危険性がある。中村氏のような優秀な研究者に育った人でも、入社時には今回授賞対象になったような立派な研究を完成できるという自信はなかっただろう(注2)。実際、中村氏も別のところで、研究者として力をつけたのは入社後の苦しかった10年間であったと発言されている。

 つまり、会社にとっては研究者の雇用は投資であるが、研究者は通常の就職の気持ちで入社する。その思惑の違いを理解しないと、この種の話は本質に迫れない。成果が出なくても10年間給与と8億円とも言われる研究費を支払った会社の言い分(http://biz-journal.jp/2014/10/post_6311_2.html)も理解できる。

 尚、研究者の大発明についての一般社会の理解は、かなり実体とずれていると思うので、数日前(10/8)の記事、の考察を参考にして欲しい。

注釈:
1)どうでも良い事だが、米国籍の方なので日本訪問とすべきである。
2)野茂選手が米国に行った時、年俸は近鉄時代の1億4000万円からわずか980万円になった。迎えはトラックを運転する人一人であったとのこと。その名声とか過去の実績などにドライな文化の下でのみ、中村氏の様な企業研究者に対する待遇が可能であると思う。

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