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2014年12月30日火曜日

貧富の差の拡大:ピケティ入門の為の本を読んでの感想

==この本、英訳版pdfは以下のサイトで自由に読めるようです。http://resistir.info/livros/piketty_capital_in_the_21_century_2014.pdf イントロを少し読みました。マルサスから始まって、マルクスやエンゲルスなど、資本についての考え方の歴史的なレビューがかかれています。やはり原著をゆっくりと読むべきだと思いました。(2015/1/1)==

池田信夫氏による「日本人のためのピケティ入門」を買って読んだ。これを読めば、英訳本700頁に及ぶ本の概略が判るというのだが、内容はほんの僅かであり、本当にこれで入門できるのかどうかは判らない。昨日本屋でこの本がこの分野の人気第二位だということだった。そこで、その本の大凡の内容と感想を書くことにした。

21世紀の先進国では、資本による収益率(γ)があまり変化せず、一方で成長率(g)が低下する(注1)。そのため、資本の蓄積が起こるが、所得はそれほど増加しない。そして、資本収益は貯蓄の形などで資本に追加される傾向が強いため、このr>gの関係は、資本/国民所得の比率(β)の増大を招く。(図5.3;34頁;以下図は全てピケティのHPに掲載されている)γ(資本収益率)があまり変化しないので、国民所得の内の給与以外による部分(資本分配率、資本収益/国民所得=α)が大きくなり(図6.5;41頁)、富豪と貧民の二分化が起こる。

つまり、このγ>gの関係が資本主義の根本的矛盾としてピケティの主張のエッセンスを為すという(14頁)。尚、ピケティは資本収益として賃金以外の全てをあげ、資本を資産の意味で用い、土地、工場の設備、金融資産などを含むという注釈が著者によりなされている(注2)。

これらの関係は、高度成長した資本主義国では、定常的な成長に近づくという仮定の下に成立する。ここで、資本と所得の比率(β)は、経済成長した国家では、貯蓄率/成長率に近づく。これを資本主義の第二根本法則という(注3)。また、α(資本収益/国民所得)は、(資本収益率(γ)x資本)/所得であるから、α=γxβとなる。この恒等式を資本主義の第一根本法則という(第一、第二法則:52-54頁)。

これが、この本の第三章の一節までをまとめて書いたものである。三章二節では、格差の原因が、三節では格差拡大の防止について書かれている。簡単にまとめると、大きな格差発生の原因は、新保守主義的政策、更にタックスヘイブンの出現である。その格差の固定化は、相続財産の増加とそれによる教育格差が原因である。解決には地球規模での資本課税とタックスヘイブン(オフショア)対策を、国際協調を強めることで実行する事が考えられるが、なかなか困難である。

この後半部分をもう少し詳細に書くと: 確かに、各国の過去40年ほどの資本と所得の比率は(図5.3)、1980年ころより急激に増加している。これは、先進国である英米で成長率が低下した1980年代に、所得に対する累進課税などを緩和したレーガンやサッチャーの新保守主義的政策以来強まったものと解釈される。1960年代には最高税率が80−90%だったのが、この時期に30%代に低下した(図14.1)。これが資本の蓄積とその後の経済のグローバル化で世襲的な富豪と国際的な金融資本が出来た原因である。この異常な状態から抜け出す為に、累進税率を再度高めるだけでは、富がタックスヘブンへ逃げることになる(注4)。ピケティは、グローバルな累進資本課税と、世界の政府による金融情報の共有を提案した。しかしながら、世界の主要な国が高度な協調関係を築くのは現状ではなかなか難しいとのことである(注5)。

これらの理論と富の偏在の説明は漠然とした把握というレベルでは簡単であるが、こんな内容で700頁の本になるのかと言う疑問は解けぬまま残る。「はじめに」に書かれている様に、ピケティの理論は過去の経済理論から導出されたものでなく、恐らくデータから経験的に導かれたものだろう。この理論的な部分は、本の主内容ではなく、膨大な過去200年のデータを取得して分析することなどに頁数を埋めているということである。

私(理系人間)の感想:
1) ユーロ圏は経済だけ一緒になり政治が別々なのが問題だと、昨年のギリシャ危機のときさんざん聞かされた。しかし、同じようなことが世界でも言えるのではないだろうか。経済だけグローバル化して、政治がそれに伴っていないのだ。
2) 今の世界経済に起こっていることは、この本で議論されている高度に発達した資本主義での富の偏在とは別の現象なのかもしれない。つまり、経済段階の異なる多くの国家の共存を考慮した経済モデルで理論を作る必要があるのではないだろうか。

注釈:
1)この不等式が何故成立するかの説明が全くない。おそらく、成熟した資本主義社会では、莫大な資本をもつ巨大化した企業は、資本収益率(資本の取り分)を決定する力が強いからだろう。
2)貸借対照表では資本は資産に一致する。ただ、一般家庭の家や土地は金を生まないので、この本の中での定義である資本に入れるのは無理があると思う。また、株や土地などは貸借対照表で金額に換算する際、実質的な価値と簿価では大きな差があるのが常である。しかし、そのような疑問にはこの本は答えてないし、原著に定義されているかどうかの記述もない。
3)工場の設備などは減価償却により一定年で無くなる。そして経済規模は徐々に増加する。定常的になれば、資本の額は過去の貯金が積み重なったものとなるので、その額は貯蓄率に比例する。国民所得も定常的な成長を仮定すれば、その額は低成長下でも直線的増加し、その額は成長率に比例する。
4)タックスヘブンについては、例えばhttp://www.777money.com/yougo_kolumn/yougo/tax_haven.htmを参照してほしい。
5)国際協調については2008年にBloomberg Businessweekの記事が日経により紹介されている(http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20080602/160101/?rt=nocnt)。

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