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2015年5月23日土曜日

「クレムリン・メソッド:世界を動かす11の原理」の感想

北野幸伯著の本、「クレムリン・メソッド」世界を動かす11の原理(集英社インターナショナル、2014 /12/20発行)を読んだ。世界を動かす本質的な力やその源泉について、非常に判り易く解説されている。感心のある方なら、誰にでも推薦できる良書であると思う。

前半の第1から第6の原理として、世界の近代史を動かしている力とその法則について述べている。つまり、近代史は覇権を争う歴史であり、その動機は国家の利益、つまりお金、と安全の確保である。その方法は、第7から11までの原理に書かれている。派遣国やそれを目指す国は、その目的達成のための戦略を立てて、それに沿った情報操作とそれによる国際的宣伝と仲間作りなどを行なうのである。

これら全ての行為は、戦争とも外交とも言えるだろう。「戦争とは情報戦、経済戦、実戦の三つである」という原則(第10の原理)を理解し、日本に中国や米国などがとって来た戦略、それを実現するための情報戦や経済戦とその効果をレビューして、今後の日本の生き残り戦略を立てるべきであると教える。

具体的には、昔の例では太平洋戦争に至るプロセスが判り易く解説されている。つまり、日露戦争(1904年)で多額の経済支援をした米国に対して、満州の利権の分配を全く行なわなかったことが、米国を敵にまわす発端であったとある。そして1907年に対日戦争計画(オレンジプラン)が作られ、日本はその罠にはまってしまった。

また、最近までの米国の安倍政権に対する警戒姿勢は、中国の対日戦略とそれを実現するための周到な作戦の結果であると書かれている。中国の対日戦略を日本は必死に読むべきだが、恐らく尖閣諸島や沖縄を中国の勢力圏に入れることだろう。中国が企んだ中韓露が協力して日本の歴史認識問題を攻撃するプロパガンダは、ウクライナ問題が日本への助け舟になって頓挫した感じであるが、その効果は既に世界全体に行き渡っているらしい。

昨年だったか、来日したドイツのメルケル首相が行なった、日本への慰安婦問題に関するアドバイスは、その宣伝効果を証明している。そして、憲法改正、靖国参拝、歴史修正の3つを日本が行なうと、中国の罠にはまり、日米関係は破壊され、尖閣諸島は中国のものになるだろうと予言している。非常に説得力がある。

この本の要約は出来ないし、そして、全体の中身を紹介することは出来ない。もう少し詳しく一部を紹介すると、たとへば、第5の原理「エネルギーは平和より大事である」や第6の原理「基軸通貨を握るものは、世界を制する」のセクションは、最近の世界経済と政治を理解する為にまとめられた必須教材のような気がする。日本の首相が、基軸通貨としてのドルを守る米国の必死の努力を、理解していなかったエピソードも書かれている。この一年間に読んだ本の中で最も優れた本だと思う。一読を強く推薦したい。

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