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2017年3月20日月曜日

政争の具にされた豊洲地下水の汚染問題

1)豊洲移転問題は、元々二つ存在した。一つは敷地の購入や建設に関係した不正があったかどうかであり、もう一つは築地から豊洲に移転すべきかどうかである。前半の問題について、不正がありそうだと小池東京都知事が考えて、それを明らかにしようとする当初の努力は評価できるだろう。(補足1)しかし、後者、つまり食の安全から考えて直ちに移転すべきではないと判断したことは間違っていた。食の安全が脅かされるという根拠は何もないからである。

都知事は、両者の区別を明確にし、最初から計画通り豊洲に移転すべきだったのだ。問題を大きくして、敷地購入や建物の建設に絡んで不正を働いたものたちを追い詰めようと考えた、政治的策略がおろかだったのだ。この問題の議論か口論かわからない騒ぎを見ていると、現在の政治の特徴が見える。つまり政治の舞台には科学も論理もない。それは有権者一般に、科学に対する知識も畏敬の念もないからである。

「豊洲から採取した水から環境基準の100 倍のベンゼンが検出された」という事実は正しいだろう。しかし、その結果から何が言えるのか。そもそも検査した水は、法に水質基準が定められた地下水なのか?そして、その検査は何の為に行ったのか(行うのか)?それらさえ明確にせずに議論(口論)し、報道機関はそれらをそのまま報道している。

繰り返しになるが、この豊洲に移転するかしないかという問題との関係で、この水質検査の結果を正しく理解する原点は、先ず何を目的に地下から水を採取し、検査しているのかを明らかにすることである。目的が定まらなければ、水の採取方法も決まらないし、その結果の評価もできない。

つまり、市場が豊洲に移転した場合、一連の検査結果から考えてどのような不都合を生じるのか、都知事は根拠を明らかにすべきである。「不安を抱く都民の気分の問題だ」というのは、あまりにも非論理的非科学的な台詞だ。また、東京都の関係者は、何故検査に供する水の採取方法を替えたのか、その根拠を論理的に説明すべきである。「もうそろそろ豊洲移転を決定したい都知事を困らせるためだ」とは言えないだろう。

2)地下水とは広義には地下に存在する水のことだが、公の場で科学的に議論する場合は帯水層よりも下部に存在し重力によって流れる水である。(補足2)単に土壌に存在する土壌水や、廃棄物処理場の土壌に含まれる保有水は、地下水とは呼ばない。環境基本法やそれに付随した文書にある水質基準は、自然環境中を循環する帯水層以下の地層中を移動する水、地下水、を対象にし、その目的は飲用に供した場合に健康を害しないことである。(補足3)

東京都が行っている豊洲土壌から採取した水の検査は、科学的には地下水と言えない土壌の保有水を対象に、検査の目的もあいまいなままに行っている可能性が高い。何故なら、地下に作った採取用の溜に流れ込んでくる水ではなく、其処に長期間滞在した水を採取し測定に供しているからである。帯水層より上の残存した廃棄物を含んだ土壌から流れ込んだ水を対象に、有害物質濃度を測定している可能性が高い。そして、その数値の意味もわからないままに騒ぎを煽っている?可能性がある。

環境基本法に付随した文書の付表に(補足3)、ベンゼンに関する基準として0.01mg/Lという数値が書かれている。その100倍とは、1mg/Lである。つまり、最近豊洲地下の埋立地から採取された保有水は、1.0ppmの濃度でベンゼンを含んでいたことになる。しかし、ベンゼンの水への溶解度は1.8g/L(15度C)であるから、その水からはベンゼンは空気中に漏れ出ることはほとんどない。従って、豊洲市場で通常の業務を行う上で何の障害にもならないだろう。

しかし、一旦築地からの移転をストップした知事は、検査の数値が大きくなる情況では、引っ越しを出来ないだろう。また、移転をストップしたのは間違いだったと謝るほどの勇気はないだろう。この問題を政争の具にした都知事の責任は大きい。

補足:

1)東京都が、豊洲の土地を瑕疵担保なして買い付けたのは、おそらく安く入手するためだろう。厳しい基準や法令を作りそれに厳格に従うと、経済的には非常に高くつく。それをかい潜って安く現実的に解決しようとすると、後で責任を問われる。体験談でもあるのだが、公務員になって一番得をする人は、あまり働かず、しかしサボらずに出勤して給与と年金をもらう人なのだ。
2)辞書(広辞苑第二版)で見ると、このように書かれている。「地下水:地層・岩石の空隙や割れ目に存在し、重力の作用によって流動する水。自由面地下水と被圧面地下水とがある。飲用・灌漑・工業用水などに利用」とある。またウィキペディアには学問的視点から地下水についての詳細な記述がある。
3)環境基本法http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H05/H05HO091.htmlやそれに付随した文書http://www.env.go.jp/kijun/tikat1.html(環境基準値が示されている)を見ても、法の目的として「地下水の水質基準を定める目的は国民の健康で文化的な生活を守るためとしか書かれていない。地下水の水質基準については、「飲用などに供する場合の基準」と何故明確に書けないのか?それが、この問題が大きくなった一つの理由だと思う。

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