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2017年11月25日土曜日

世界の宇宙旅行計画とロケットの性能&アポロ計画との比較

1)BBCニュースによると、2016年の宇宙事業全体の規模は、金額で約36兆円だったという。その大半(75%)は現在私企業が行っている。http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-41383244

利用目的としては、通信、偵察、気象など本来政府が行うべきインフラ的なものが大きいだろう。更に、各種実験や天文学的観測などもあるが、最も大きな影の目的は軍事だろう。(補足1)私企業と言っても、政府の支援があってこそ可能なのであり、実態は私企業としての完全な自立を前提としない官民連携事業だろう。

しかし、上記考えに真っ向からチャレンジする計画がある。それは民間人を対象にした宇宙旅行ビジネスである。それは或いは影の目標を隠すための隠れ蓑かもしれない。兎に角、すでに数社が計画を発表しており、2-3年の内に民間人の宇宙旅行出発のニュースが世界に配信されるかもしれない。

尚、国際宇宙ステーション(ISS)を利用した宇宙飛行は既に、億万長者数名が体験しているという。ロシアの宇宙ロケットで従来の宇宙飛行士のように訓練をして、ISSに滞在する。費用として数十億円支払ったらしいが、これはビジネスと従来型の国営宇宙開発の中間的性質のものだろう。日本の代理店はスペーストラベル社である。http://spacetravel.jp/tours/orbital/

以下、民間人を対象にした宇宙旅行ビジネスを紹介する。

① 南アフリカ系の起業家イーロン・マスクのスペースX社(米国)は、火星移住計画構想を発表して話題になった。https://matome.naver.jp/odai/2135409072033199001また同社は、2018年中に月周辺に2名を送る計画だという。http://www.bbc.com/japanese/39111989

どうもこの会社の計画は過大宣伝というか、話題になることだけを狙っているような気がする。まともな理系の感覚を持った人間は、火星移住計画が21世紀前半に実行可能であるとは決して考えないだろう。また、月周辺への宇宙旅行は、NASAの協力で可能になったと書かれている。従って、月周回旅行が実現できないときに、NASAから十分な協力がなかったと言うつもりだろう。(補足2)

尚、別のニュースでは、「スペースXのイーロン・マスクCEOは野心的な期限を設定しつつもそれを守らないことで知られる」と書かれている。https://www.cnn.co.jp/fringe/35108421.html

② 一方、アマゾンのCEOで富豪世界一を争うジェフ・ベゾスのブルー・オリジン社(米国)も宇宙旅行を2019年4月までに実現する計画である。(すぐ上の①のサイト参照)100kmを超える宇宙空間に人を運び、頂上付近で弾道軌道に移り、無重力状態などを体験させたのち、帰還するという。6人ひと組みで宇宙に向かうという。運賃一人当たり25万ドル合計150万ドルでは、採算がとれないだろうが、最初の試みとしては理解できる。 http://sorae.jp/030201/2016_03_13_bo.html

③ 英国のコングリマットであるヴァージン・グループは、宇宙旅行のためのロケット(宇宙船)SS2を開発し、高度100kmを超える宇宙空間(補足3)への旅行の予約を取っている。料金は20万ドルで、名簿には日本人の名前(平松庚三、山崎大地ら)もある。SS2はグライダーに似た形を持ち、母船から発射されて滑空で帰還すると考えられる。(ウイキペディア参照

最初の旅行は、2018年末までに実現する予定らしい。これも、6人一組みで宇宙に向かうそうである。日本の代理店もあるので、関心のある方は、以下のサイトを見て欲しい。http://www.club-t.com/space/

尚、日本の私企業にこの種の野心的な試みがない。日本の企業の生命力というか発展する力の限界を感じ、ちょっと残念である。堀江貴文氏のチャレンジがあるが、宇宙ビジネスへの参加の試みはまだ非常に低いレベルにある。

2)ロケットの性能と月旅行の可能性:

以下に用いる略号をリストします。 :低高度地球周回軌道LCO;静止トランスファー軌道:GTO;RLG=LCOへの打上可能重量とGTOへの打上可能重量の比

スペースX社は、国際宇宙ステーションへの補給に自社の「ファルコン9」ロケット(直径3.66m、高さ70m)を使っているので、宇宙開発には実績がある。このロケットは中規模二段ロケットで、打ち上げ後に垂直着陸で帰還し、再利用可能なことで話題になった。LCOには28トン、GTO(補足4)には使い捨ての場合8.3トン、再利用する場合は5.3トン運ぶことが其々可能である。

一方、ブルー・オリジン社は「ニュー・シェパード」や「ニュー・グレン」といったロケット打ち上げシステムを開発している。これらも垂直着陸機能を持つと言われ、再利用によりコスト低減を図る。着陸帰還するのは第一段目である。ニュー・グレンは大型ロケット(直径7m,高さ95m)で、LCOに45トン、GTOに16トン運ぶことが可能だと公表されている。http://sorae.jp/030201/2017_03_08_glenn.html

SS2は既に述べたように、滑空で帰還すると思われるが、月旅行などを対象としていないので、ここで比較の対象にはしない。また、宇宙旅行のサービスはないが、日本の宇宙開発事業団(JAXA)最大のロケットH2B型(直径5.2m、高さ56.6m)の性能を見と、LCOに19トン、GTOに8トン打ち上げ可能である。

アポロ計画の時のサターンV型ロケット(直径10.1m,高さ110.6m:11282)だが、LCOに118トン、月周回軌道には47トン、其々打ち上げる能力があるという。https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B5%E3%82%BF%E3%83%BC%E3%83%B3V この47トンという数字だが、LCOへの118トンの打ち上げ能力から考えて、大きすぎるように思う。しかし、月着陸船が約15トンで、司令船と機械船の合計重量が約30トンなので、この数字以上なければ月着陸は不可能である。https://moonstation.jp/faq-items/f509

以上のロケットに関して、その打ち上げ能力を少し見てみたい。注目したいのは、LCOへの打上可能重量とGTOへの打上可能重量の比(RLG)である。そのRLGは、ニュー・グレンでは2.815(=45/16)、ファルコン9では2.75(=22.8/8.3)、H2Bでは2.375(=19/8)である。ところが、サターンVではそのデータは見つからなかったが、GTOへ運ぶよりも月周回軌道に運ぶ方が数十パーセント大きなエネルギーを要することを考えると、上記各社の値よりかなり小さな比が推定される。

3)エネルギー的考察:

地球の重力により1kgの物体が地上で受ける引力は、F=MG/R^2(^2は二乗の意味;F=9.8kgm/s^2)で与えられる。Gは万有引力定数、Mは地球の質量、Rは地表の地球中心からの距離は6400km(地球の半径)である。従って、地表面での1kgの物体の持つ位置エネルギーは、上式を無限遠方から6400kmまで積分すれば良い。簡単に-MG/Rが求まる。(補足5)

向心力=引力の式なども用いると、LCOに打ち上げた時に得る荷物の力学エネルギーは、1kgあたり0.5MG/Rであり、GTOに打ち上げる場合は凡そ0.85MG/R、静止軌道に打ち上げるのに0.925MG/R(補足6)、月の近くまで運ぶにはほぼMG/R必要であることがわかる。

現在各国が用いているロケットでは、RLGが2以上であるので、荷物に与える力学エネルギーを単位質量あたり70%増加させる(GTOに載せるため)ためには、積載する荷物を半分以下にしなければならないということになる。

その理由は以下の様に考えられる。ある軌道に荷物を打ち上げるには、荷物とロケットの両方が軌道に乗らなければならない。それは陸上輸送でも何でも同じである。ロケットを使い捨てにする場合でも、荷物に燃料を使い切ったロケット本体をその軌道に持ち上げるエネルギーも必要となる。

同じ単位質量あたりの力学的エネルギーを荷物(質量mで、()内は軌道を表す)と最終段のロケット本体(質量M)に与えると考えると、
RLG = m(LCO)/m(GTO)=1.7+0.7(M/m(GTO)) ———--(式1)
となる。(補足7)つまり、ロケット本体が質量ゼロの場合、RLG値は1.7となるが、ロケット本体がm(GTO)と同じなら2.7となってしまう。これが、上記多くのロケットでRLG値が2以上になる理由だろう。

月まで運んで周回軌道に乗せるには、地球の引力と月の引力が釣り合う峠を越える必要がある。そこまでの段階で単位質量の荷物が得る力学エネルギーは0.97MG/R位だろう。其処で、機械船、司令船、月着陸船が連結された形でロケット最終段から切り離されたとすると、更に減速して月周回軌道に入る時には、荷物1kgあたり必要なエネルギーはMG/R位になるだろう。(補足8)

つまり、LCOへの打ち上げ重量の118トンや、現在のロケットでそこから GTO軌道に上げるだけで搭載可能重量が40%程度に減少することなどを考えてみると、47トンはGTOへの搭載重量だろうと考えてしまう。つまり、サターンVで月周回軌道に乗せる重量は47トンには届かないだろう。また、月着陸船が用いたとされる、垂直下降して着陸する技術は、最近ようやくスペースX社やブルー・オリジン社が開発して可能になった。それが40年前に月でできたと考えるのは、楽観的すぎるとおもう。

アポロ計画の成果はデッチ上げである可能性が極めて高い。http://rcbyspinmanipulation.blogspot.jp/2016/12/11.html

1)NASAの職員が語る宇宙開発の目的:http://toyokeizai.net/articles/-/13923 しかし、十分納得力のある内容とは思えない。
2)スペースX社から上記のような依頼があれば、NASAには断る理由がない。何故なら、アポロ計画で既に月に飛行士を送って、無事帰還させたことになっており、月周回は技術的には遥かに簡単な筈だからである。もし申し出を断れば、アポロの成果が捏造だったと認めることになる。
3)高度100km以上の上空は宇宙と見なされている。そこを外国のロケットが通過しても、領空侵犯には当たらない。(因みに、北朝鮮の東北上空の通過は、領空侵犯ではない。トランプ大統領の言うように迎撃していれば、北朝鮮に非難の口実をあたえただろう。)
4)静止軌道は高度36000kmの円軌道だが、遠地点が高度36000kmの図(1)の楕円軌道を静止トランスファー軌道(GTO)と呼ぶ。そこから、遠地点でロケット噴射をして速度を増せば、静止軌道に近づく。
5)従って、地球の引力圏から脱出させるには、MG/Rだけの運動エネルギーを与えれば良い。地球の重力加速度gは9.8m/s^2がわかっているので、v^2=9.8m/s^2*2*6400000m(*は積を表す)より、11.2km/sが得られる。これが宇宙速度である。また、36000km上空の軌道では、v^2=9.8m/s^2*2*(36000+6400)kmから静止軌道上での速度3.07km/sが得られる。
6)この場合、凡そMG/R*(1-6.4/42.4)にそこでの並進速度のエネルギー(小さい)を足し算した値となる。静止軌道の地球中心からの距離は42.4kmとした。更に、静止軌道上に上げるには、MG/R(1-3.2/42.4)となる。これは、静止軌道を回転する運動エネルギーを加算した結果である。従って、静止軌道に打ち上げるに必要なエネルギーは0.925MG/Rとなる。
7)LCOに荷物(重さ: m(0)+m(GTO))を運ぶ際、燃料が空になった最終段(重量(M))も運ぶだろう。GTOに乗る時も燃料が空になった最終段は同じだが、荷物の重量はm(GTO)だけになるとする。同じロケットで打ち上げるので、その両方でエンジンから投入されるエネルギーが等しいとすると、(式1)が得られる。
8)逆推進の際、姿勢制御が大事である。その為には、位置情報と姿勢に関する情報を正確に取得することが必須である。弾道軌道で月の近くまで来る間に、姿勢は軌道に沿っていないだろう(ロケットにはライフルの銃弾の様に軸方向の回転が加えられていない)。同じことが、地球帰還の際にも言える。上図の様に、NASAの計画では地球周回軌道に乗らないで、帰還することになっている。無理だろう。(補足8は翌日朝追加)

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